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鉄器の農具は、石器や木器よりもはるかに生産力が上がる。しかし、沖縄には鉄器の原材料である鉄鉱石や砂鉄がなかった。それ故、沖縄の歴史はヤマトよりも10世紀近く遅れたと言われている。
かつては、遠い大和の国から、鉄の塊を輸入して、農具を製作していたが、その様子を生き生きと描いているのが「鍛冶工狂言」である。
【あらすじ】
鍛冶工主(かざぐしゅ)が登場し、鞴親父(ふけいーじゃ)・前打(まいうち)(大鎚打)を呼び出して鍛冶に出かける。
鍛冶工主は、鍛冶を始める前に、鍛冶の祝詞(飾り口)を唱える。
祝詞では、鞴・竃・鎚・鋏・金床・木炭などの鍛冶道具を列挙するが、これらの鍛冶道具は単なる道具ではない。鍛冶の神様としてご来臨下さるようにと祈っているのである。
祝詞(飾り口)の後、お神酒をいただいて、鍛冶を始める。
最初に、金串(かなふぐし)を作り、つづいてヘラを作る。ヘラが出来上がると、鍛冶工主は、前打の一人にヘラの出来上がり具合を点検させる。
前打は、出来上がったばかりのヘラを手づかみにして、その出来映えを褒めるのだが、鉄の熱さに耐えられず、「熱い、熱い」と騒ぎ出す。
傍にいたもう一人の前打が、
「耳をつかめ、耳をつかめ」と言うと、彼は自分の耳ではなく相手の耳をつかむ。耳をつかまれた前打は、「自分の耳をつかまずに、なぜ俺の耳をつかむのか」と食って掛かる。
すると、「お前の耳は豚の耳のように大きいが、俺の耳はネズミの耳のようにチョンとして…いて小さいからだ」とやり返す。
鞴親父は、そのような二人のやり取りを静めて、「家では、オトナリ神(男たちを守護する伯母・姉妹の霊力)たちか、鍛冶祝いの準備をして我々の帰りを待っているでしょう」と申し上げて、我が家へと退場する。
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