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竹富島雑感

竹富島喜宝院蒐集館館長 上勢頭芳徳
「星砂の島」第4号、第5号掲載

棟木の銘


 平成10年度の町並み保存整備事業の修復工事は、我が家の順番にあたった。中村家や旧宮良殿内には及びもつかないが、沖縄の普通の規模の木造瓦葺きの家だ。
 棟木には「天官賜福紫微鑾駕」の文字と、大正11年8月の棟上げ日と、棟梁と家主の名前が墨書されている。
 数百回の台風と何回かの地震にも耐え、シロアリも寄せつけず77年を経てしっかりと立っている。38本の柱のうち10本を取り替えたが、梁、桁はそのまま使うことができた。りっぱなものだ。
 二番座にかけてある絵でしか知らない曾祖父が建ててくれた家は、たぶん私の孫の代までは十分住めるだろう。

 子孫のことを思って家を建てるか、自分一代でいわば使い捨ての家を造るかの違いだろうか。価値観は多様化しているのだそうだから、どちらがいいと一概にいえないだろうが。
 先日、北九州市で長崎街道まちなみフォーラムが開催された。基調講演は鈴木健二さん。あの軽妙な語り口で、父母−祖父母−曾祖父母−高祖−祖先と続くこの流れを分からずに、子孫へとまちづくりを伝えたいとは片腹痛い、と言われてしまった。
 我が家の屋根裏の梁に残る材木伐り出し時の縄の結び溝や、親戚近所からの到来帳の品々に、曾祖父母たちの家造りにかける執念を見る思いがする。家の修復改築で祖先との系とか繋がりというものに改めて気づかされた次第。

 伝統文化の継承という島づくりの意識は子供たちに伝えていこう。建造物の修復、修景には公的資金で通年の仕事がある。不足しているのは大工さんの後継者。先日は沖縄職業能力開発短大の学生8人が、島の集落と家の造りの視察研修にやってきた。このうち1人でも弟子入りする子はいないかしらん。

「琉球新報」1999年4月7日掲載

 

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