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今でこそ、アウジ、アッパ(爺さん、婆さん)らも「まちなみ」と言ってくれるが、当初のころは「町並みツティ、ノーリヤー」(町並みって、何)という調子だった。
白分たちが当たり前に継承してきたことが、今さらなんでそんなに大騒ぎするのか、理解できなかったようだ。以前は、離島に限らず石垣島でも赤瓦の家、さんご石灰岩の石垣が続いていたのに、過疎化という言葉に脅かされ、近代化という耳当たりのいい言葉に踊らされて、建物も集落もすっかり変わってしまった。集落全体として残しているのは、竹富島だけであろう。人それぞれに多様な価値観があるだろうが、経済的価値と愛着的価値とに分けて考えてみる。
暑い沖縄では家を南向きに、開口部を広くとって風を取り入れて暑さをしのぐ。石垣とフクギなどの屋敷林を巡らせて台風対策とする。というような風土に根ざした建築はまさに文化なのだから、それを誇りとして保存継承するというのは愛着的価値といえよう。
愛着をもって家を大事にしている地域を文化庁は「重要伝統的建造物群保存地区」として選定し、家を建て替えてくれる。それが図らずも観光資源となり、観光客の増大となってUターンを促進し、赤ちゃんも生まれ、人口の増加につながった。文化は経済を救い、心を救うということか。味なことをやってくれるお役所もあるものだ。
司馬遼太郎さんは「この国の行く末はどうなるのだろう」と心配しておられたが、バブルが崩壊してやっと日が覚めたのか今、文化・歴史・環境・伝統ということが追い風になっている。強風でなくてもいいから、底流にはいつも吹き続けてほしい。