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崎山毅『蟷螂の斧』より
竹富島の御岬浜より三十間余の沖の方に「ソイ」という大岩が海の中にそびえ立っていました。その大岩が東に一つ、西に一つ並んでいました。
東の岩には1匹の男ねずみが住んでいました。西岩にも同じく美しい女ねずみが住んでいました。海をへだてた関係で、なかなか両方の岩に行ってお互いに語る事もできず苦心していました。
ある日のこと、東岩の下にソーチ(ボラ)と言う大魚さんが遊んでいました。ねずみさんは良い時だと思い魚さんにお願いをしました。
「魚さん、一つあなたにお願いがある」
「なんだね、ねずみさん」
「西の岩に住んでいる美しい女ねずみさんをお嫁にしたいのだが、西岩まで行くことができません。ですから私の代理に一つ相談に行ってもらえませんか。うまく相談できましたら充分な御礼を致します」
「ねずみさん、その事なら心配無用。私が引き受けます。しかし、あなたの将来の夫婦に関する重大問題を決める事ですから手ぶらでは行けない。何かおいしいご馳走でも作って持って行けば話がうまくまとまるでしょう」
「それじゃ、ネズミさんの大好物の魚の料理を作ることにしたらどうでしょう」
頼まれた魚さんは小さい魚を犠牲にして料理を作り、椀にいっぱい山盛りした魚のクバン料理を持参しました。
女ネズミさんも、「前々から私も男ねずみさんがおられる事を聞いて、お嫁に行きたいと思っていました。ありがとう。一日も早く結婚式を挙げるよう吉日を選んでお知らせ下さいませ」と言いました。
大魚さんは大変喜んで、早速東岩のねずみさんへ確かに婚約済みですということを報告しました。
「善は急げ、大魚さん。結婚式までよろしく」と男ねずみさんは頼みました。
海に楽しく暮らしている魚連中は大魚さんの行動に、「自分の仲間である小魚さんを犠牲にしてまでも、ねずみの事をする必要はない」と、大変怒りました。
その後大魚のソーチさんは、一同にお詫びを申し、それからねずみの所には寄りませんでした。
両方のねずみさんは婚約はできたものの、楽しい結婚式ができなかったのを大変残念に思い、離れた大岩の上に登って、お互いに岩だけを眺め恋しい唄を歌ったと言います。
その唄が残されています。
アイヌソーイヌ ウヤンチュと イルヌソーイヌ ウヤンチュと
夫婦になるんと 所存しが
魚ゆ 取り来 クバン盛りて
成るんか成らぬか 一ちぬ二ち